消えゆく運命?

首都高速都心環状線を通る度に一瞬目に入る、異彩を放つビルをご存知でしょうか?

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首都高からはこのように川の下から見上げるように顔をのぞかせます。
(恐らく昔は本当に川だったと思われます)

いつか間近で拝見する機会をと思いつつ数十年を経てしまいましたが、たまたま近郊で現場がはじまることになり先月漸く立ち寄ることができました。

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この建物は世界的な建築家、故、丹下健三氏によって設計され、1967年に大林組の施工によって竣工した「旧電通本社ビル(電通築地ビル)」です。

2002年まで電通の本社として使用され、その後は子会社の電通テックが2014年9月(つい昨年)まで使用していました。

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現在の電通の本社は汐留に移りましたが、フランスの建築家ジャン・ヌーヴェルによる基本デザインで知られる↓こちらですね。
浜離宮 018

 

さて旧電通本社ビルに戻りますが、昨年の12月に住友不動産が取得し、昨年から空きビル状況のままのようです。(よって写真は残念ながら外部のアプローチまで。)

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その住友不動産ですが周囲にある、電通築地第2ビル,電通築地第3ビル,電通恒産第2ビル,も併せて取得し、それらを合わせた敷地面積は6,536㎡にもなるそうです。

(↓こちらが情報源です)
http://www.decn.co.jp/?p=21367

目の前の首都高も、国交省が上空に人工地盤をつくって敷地化し、発生する容積を周辺の開発計画に上積みするというような構想があるようですので、再開発がはじまれば本当に見納めとなってしまう可能性が高いと思われます。

実際に間近でこの目にすることで尋常ではないエネルギーを感じ受け、高度成長期(末期)という時代背景を思い起こしました。

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現在の建物はファサードを消す、またはあっても薄く装飾的なものが多く、外部から構造体を認識できる建物は少なくなりましたが、ストラクチャー(構造体),転じて重力がファサードに力強く表現され、構造梁の断面は短辺(東西面)のファサードにも突出しています。

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その無骨なコンクリートの経年による表情と相まって、この時代のリアリティを感じました。
このような意識で造ることができた貴重な瞬間だったのかもしれません…この一時代の産物を記憶に留めるべく是非足を運んでほしいです。

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国外ではこの手の建築物は文化財として、その旨を示す看板が掲げられてもおかしくありませんが、同設計者による赤坂プリンスホテルや、ついこの間に解体されたホテルオークラはじめ、昭和の遺産は消えていく運命にありそうです。

杉浦 充 @家をつくろう会議
http://iekaigi.com


2015-11-05 | Posted in 建築のこと, 杉浦充No Comments » 

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